同窓会の歴史(2)

武蔵野:さつき会

1955(昭和30)年 第1回卒業生

 2005(平成17)年に日本赤十字武蔵野短期大学が統合され、新しい「日本赤十字看護大学」になって10年になろうとしています。大学の統合とともに両校の同窓会も2009(平成20)年統合されました。本稿では、武蔵野で誕生した「さつき会」に焦点をあてたいと思います。

 武蔵野赤十字病院が誕生したのは、昭和24年のことです。神崎三益初代病院長は、「学生のいない病院は、子どものいない家庭のようで寂しくて物足りない」、「医師、看護婦は車の両輪である」という強い信念のもと看護学校設立に尽力され、1952(昭和27)年、武蔵野赤十字高等看護学院が誕生しました。

篠崎ハル監督

 第1回生は、病院近くの学校の空き教室を借りた仮校舎で、救護服姿で入学式に臨みました。ベニヤ板で仕切られた木造教到は、実習室と隣り合わせで、時おり、他教室から声が聞こえてきました。また、寮は、運動場の端にある茅葺屋根の民家を改造した建物で、襖で仕切られた4人部屋と食堂、舎監(当時の教務主任:篠崎ハル監督)の部屋がありました。当時、神崎学院長が、毎学期の終わりに畳の部屋で円卓会議を開き、学生の声を聞く時間をもつなど、学校全体が家庭的な雰囲気だったことがうかがえます。

1956(昭和31)年 新校舎前にて

 そして、武蔵野赤十字高等看護学院の第1回生が卒業した1955(昭和30)年、同窓会「さつき会」が誕生しました。第1回生の卒業式は仮校舎で挙行されましたが、1956(昭和31)5月には円形でモダンな校舎が新築され、当時大変珍しく、各方面から注目を浴びました。

 さつき会会則には「本会は赤十字理念に基づき、看護教育及び看護業務の発展に貢献するとともに、会員相互の親睦を図ることを目的とする」とあります。その活動はどのようなものだったのでしょうか。残念ながら、当時を伺う資料は少なく、本稿をお読みいただいた武蔵野赤十字看護学院卒業の先輩方に、ぜひ資料を頂きたいと思っています。

1956(昭和31)年 開学式の様子

 ここでは、さつき会が30周年を機に発行が開始された『さつき会々報』から当時様子をご紹介いたします。

 会報第1号の発行は1985(昭和60)年5月のことです。武蔵野赤十字高等看護学院は14回生の教育を終え、1966(昭和41)年からは日本赤十字武蔵野女子短期大学での教育が開始されています。会誌によせられた当時の中原久江同窓会会長の言葉を紹介します。

 

 「本年は昭和30年に看護学院の1回生の卒業と同時にさつき会が発足して、三十周年に当たります。この間に会員は千人を超す大所帯になりました。30年とは本当に長いことのように思いまずが、発足から今日までの歴史の一遍一片を先輩から伺いますと濃縮された三十年を短いもののように感じます。そして、過去の努力を受け継いで明日に向かわねばという思いがわいてまいります。…中略…。
 全国各地での同窓生のご活躍を耳にする時、頼もしさを感じると同時にこの力が結び発展していく必要を感じます。そのためには同窓生の交流をもう少し充実する必要があります。会報はこの役割の1つを担うと思います。そこで30年を機会に発行を試みました。」

 

 この後、会報は2006(平成18)年の第22号まで、毎年会員に届けられました。中原久江会長の「会誌が同窓生の交流を充実する役割を」との言葉は、統合後の本会誌に脈々と受け継がれているものと思っています。

 さて、このさつき会々報をひもとくと、同窓会の動き、武蔵野赤十字病院の動き、母校の動きの紹介とともに、同窓生からの便りが毎号掲載されています。日本だけでなく世界で活躍する同窓生の姿が垣間見えますが、その言葉のうちに母校への思いがあふれています。

さつき寮(1962(昭和37)年撮影)

 また、同窓生の便りのなかには、学生寮での思い出も多く、初めにご紹介した初期の学生寮が農家を改築した建物で萱葺屋根をトタンで覆ったために雨が降るたびに鳴る音にちなんだ通称「とんとんハウス」と呼ばれていたこと、次の学生寮は、校舎と同じ円形の建物で、ケーキをカットしたような形の部屋があり、周囲を糸杉とさつきに囲まれていたことから「さつき寮」と名づけられたことが紹介されていました。

 そして昭和64年に「新さつき寮」へと移り変わっていますが、この「新さつき寮」改築の際には、同窓生からのお祝いのピアノが送られました。また、大学祭「いとすぎ祭」では、毎年、おでん屋台やバザーなどさっき会から出店され、とても好評だったとのことから、さつき会の活動は、母校の学生支援に熱心だったことがうかがえます。

 統合後、大学祭は「クロア・ルージュ祭」として毎年6月に開催されていますので、どうぞ皆さま、足をお運びください。

 では、本会の歴史について、続きは、またの機会に皆様にお知らせいたします。

【出版担当:柴田 レイ子・喜多 里己】


文献

  • 日本赤十字武蔵野短期大学(2002).日本赤十字武蔵野短期大学五十年のあゆみ.
  • 日本赤十字武蔵野短期大学(2008).日本赤十字武蔵野短期大学開校記念誌.
  • さつき会(1985).さつき会々報 第1号.